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雑記やら拍手お返事やらSSやらを好き勝手に書いています。
2025/05
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最近地味に忙しいです。三週間連続休日出勤ってなんだ…。
平日は仕事の後に執筆する余力はないため休日にアスカガ書くぞ!と思ってるんですけど何も予定のないお休みは一日16時間くらい寝てしまうのでなかなか作業ができません_(:3 」∠)_
 
先日TwitterにUPしたSSを載せておきます。
運命後のアスカガ。かなりシリアスなので注意!

拍手[9回]



 
「できればこんな日が来なければいいと思っていた」
 カガリが認証板に手をかざすと、重い鉄の扉がゆっくりと開く。将軍服姿の彼女の後ろに続いたアスランは紫色のパイロットスーツを身に纏っていた。
「──皮肉だな。今なら私にアカツキを与えたときのお父様の気持ちがわかるよ」
「代表」
「おまえに再びこれを渡す日が来るなんてな」
 カガリが痛ましい表情で見上げた先には灰色のモビルスーツがあった。
 今はディアクティブモードであるその機体は起動すれば深紅の色に染まる。かつてこの国を救ったそれは〝正義〟の名を冠していた。
 インフィニットジャスティス──核エンジンを搭載し、先の大戦が終わってからオーブの地下深くに秘められていたモビルスーツ。アスランのかつての愛機であり、彼にしか扱えない最強の機体だ。
 国家元首であるカガリの指紋がなければ決して開かぬ重いゲートの先にあるそれを、アスランもまた見上げる。
「でも、今はこれが必要です」
「……そうだな。オーブを守るために」
 地上では今激しい戦闘が行われている。オーブ軍は必死の抗戦をしていたが、先の大戦以来争いのない世界を目指すために率先して軍備を縮小してきたこの国には今、倍以上の数の侵攻者を防ぐだけの力はなかった。
「行ってくれるか」
「俺はそのためにオーブ軍にいるんですから」
 迷わず答えたアスランに、カガリはわずかに悲しげな視線を向けた。
 大戦を経てオーブ軍准将の地位に就く彼は、もうモビルスーツパイロットとしては引退すべき歳になろうとしている。そうでなくとも、彼がエースパイロットとして活躍する日など二度と来なけばいいとカガリは願い続けていた。
 しかしその願いもむなしく、世界は──カガリは再び彼の〝力〟を欲した。国家元首としての彼女はアスランに出撃要請を出し、彼に武器を与えて再び命懸けで戦場を飛ぶことを強いた。
 唇を噛んだままアスランを見上げるカガリを、彼もまた別れを惜しむように見つめる。
 数秒をおいて、アスランは背を翻し愛機へと向かった。──その腕をふとカガリが握る。
「代表?」
 腕を引かれて、振り返って──胸に柔らかな感触を感じる。
 突然飛びついてきたカガリを、彼は反射的に抱き留めていた。
「ごめん……ごめん、アスラン」
「──カガ、リ」
 名を呼んだのは──呼ばれたのは、果たして何年ぶりだろうか。
 まして、自分の腕の中で泣く彼女を見るのは。
「今度こそ、今度こそダメかもしれないのに、私はおまえを行かせることしかできない。勝てる見込みなんてないのに」
「……カガリ」
 アスランの胸にしがみついたカガリは、もはや国家元首の顔をしていなかった。
 震えるカガリの肩に彼は両手を添えた。そして前の大戦で別れて以来初めて見る素のままの彼女の姿を網膜に焼き付ける。
「──いいんだ。今俺が行かなければ、君を敵へ差し出すことになってしまう。そうなれば君の命はない。俺はそんなことは耐えられない」
「でも、そうしたらおまえが……っ」
「カガリだけじゃない。俺はオーブのみんなを守るよ」
 アスランの優しい声音と眼差しに、顔を上げたカガリの目から更に涙がこぼれる。
「アスラン……っ」
「だから信じて俺を行かせてくれ。俺は──ジャスティスはそのためにあるんだ」
 アスランはカガリをまっすぐ見つめて微笑んだ。数年ぶりに見た──もう二度と見られないと思っていた愛する女性の泣き顔は、彼の目にはとても可愛らしく見えた。
 言葉を失ったカガリの髪をそっとなでる。頬に手を移して、軽い力で引き寄せる。
 最後のキスは一瞬だった。
 離れ際にカガリの目尻を流れる涙を指で拭って、彼は手を離した。
「カガリ──行ってくる」
 その広い力強い背中がコックピットに消えるまで、カガリはただ黙って見送るしかできなかった。
 深紅の機体が起動する。〝正義〟の兵器が動き出す。
<アスラン・ザラ──ジャスティス、出る>
 発進シークエンスが鳴って飛び上がる直前、彼はカガリへ向けて敬礼してみせた。
 そして天井にあいた穴から空へと飛び立っていく。
「──違う、おまえは戦うためにあるんじゃないんだ」
 赤い軌跡を見送りながら、カガリはひとり涙をこぼした。
 彼に決して言えない言葉があった。何度も呑みこんだ言葉があった。
 カガリは両手で顔を覆い、その場に泣き崩れる。もうなにもない格納庫の冷たい床で彼女は泣いた。
「アスラン……おまえを愛してる」
 彼女が最初で最後に口にした想いは、ただ何もない空間へ消えていく。
 
 
 同時刻、地上の戦場に一機のモビルスーツが投入された。
 かつて世界の英雄として讃えられた深紅の機体は不利な戦況の中にためらいもなく下り、剣をとる。
 ──その力は尊い犠牲と引き換えに、必ず彼女の世界を救うだろう。
 
 
***
最近書いた話の中でも結構お気に入りなほうです。
ここ三作くらいずっと死ネタっぽくなってるのは暗い診断メーカーを使ってるせいだと言い張る。

アスランが好きだから戦わせたくない自分と有能な軍人を戦場に送り出す国家元首としての自分の間で揺れるカガリが見たいです…。
こんな暗い話になったのはたぶんファフナー見ながら書いてたからだと思う。
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プロフィール
管理人:柳瀬
居住地:関西
最近カラオケで種のPVを見たことをきっかけに10年ぶりにうっかりアスカガが再燃した出戻り野郎。

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