雑記やら拍手お返事やらSSやらを好き勝手に書いています。
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「アスラン! 私が膝枕してやる!」
「……は?」
突然エターナルの彼の部屋にやってきてカガリが言い張ったことに、アスランは思わず目を剥いた。
彼の反応にカガリはむっと眉を寄せて不服そうな表情になる。
「なんだ、嫌なのか?」
「いや、嫌とかいう問題じゃなくだな……」
「じゃあいいだろう。入るぞ」
「ちょっ、カガリ……!?」
カガリはアスランが止める間もなく部屋に入り込むと、彼の腕を掴んでずかずかとベッドに歩み寄った。
そしてどっしりとベッドに座り込み「ほら」と催促するように膝を叩く。
「何してるんだ、遠慮しなくていいぞ」
「いや、そうじゃなくて! なんで突然そんなことを?」
ぐいと腕を引っ張ってくるカガリに、アスランは必死で抵抗した。彼とて別にカガリに膝枕をされることが嫌なわけではない。ここのところ彼女のことが気になって仕方がないのは自覚していたし、むしろ嬉しい部類に入る。しかし突然のカガリの暴挙をすんなり受け入れる前に、ここに至るまで一体何があったのか、それを知ることが先だった。
アスランの疑問にカガリは不思議そうに眉を寄せる。
「なんでって……プラントでは疲れた人を膝枕でいたわってやるのが当たり前の文化なんだろう?」
「……それは誰から聞いたんだ?」
「アサギたちが教えてくれたんだ。だからアスランを労わってやれって」
──どんな文化だそれは。
心の底からツッコミを入れたくなったのを、アスランはかろうじて飲み込んだ。カガリはそのデマを本気で信じ込んでいるらしい。
何故オーブ国民であるアサギたちがプラントの文化を知っているというのだろう。そもそも膝枕が当たり前だなんていう話を誰が信じるというのだろうか。──いや、ここに本気で信じ込んでいる少女がいるからこそアスランは頭を痛めているのだが。
さてこの状況をどうするべきか──アスランは片手で頭を押さえて考え込む。
「アスラン? どうしたんだ?」
アスランが黙り込んでしまったのを見て、カガリはわずかに不安げな表情になった。
「……ちょっと考え事をしていて……」
「……私にこうされるのは、嫌か?」
ふとカガリの声のトーンが落ちて、アスランははっと顔を上げた。さきほどまで妙な自信に満ち溢れていたカガリが、すこし落ち込んだような様子でアスランを見上げている。その彼女の表情と、白いボトムに覆われた膝を見て──アスランはなかばヤケになってカガリの隣に腰を下ろした。
──くそっ、もうどうにでもなれ!
後になって真実を知ったカガリに何を言われようが、自分に咎はない──そう自身に言い聞かせ、彼はカガリの膝に頭を乗せた。
「……っ」
途端に鼻に付く優しい匂いと、頬に触れるやわらかな感触。それらは彼をひどく動揺させたけれども、同時に何にも代えがたい心地よさを与えた。数秒その感触を味わったあと、おそるおそるカガリを見上げる。
するとカガリは、自分で言い出したくせに眼下のアスランを見つめてわずかに顔を赤くしていた。自分がいったい何を言っていたのか、ようやく理解したらしい。
「……っ、これは、ちょっと恥ずかしいな……」
「……そうだろうな……」
カガリはしばらく戸惑うように視線をさまよわせていたが、やがて行き場をなくしていた両手をアスランの髪に添えると、優しく撫で始めた。
「そのっ……どうだ、アスラン? すこしは疲れがとれそうか……?」
「あ、ああ……」
アスランもまた、彼女の手とやわらかな膝の感覚を味わいながら、顔を赤くする。とても気恥ずかしい行為ではあったが、それは手放し難い安堵感を彼に与えた。
「……あのさ、カガリがいいなら……しばらくこうしていてもいいか?」
「……うん……」
カガリは顔を赤くしながらも、アスランを見て優しく微笑んだ。
──この数時間後、カンカンに怒ったカガリがアサギたちを追い回していたのは言うまでもなく。
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