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雑記やら拍手お返事やらSSやらを好き勝手に書いています。
2025/05
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息抜きで書いたもの。
種世界でのアスカガ幼馴染パロ。

端的にいうと、キサカポジにアスランがいて、カガリの護衛しつつ砂漠に行ったりアークエンジェルに乗ったりする話です。
サイトに収納すべきか悩んだのでとりあえずこちらに。

興味のある方は続きからどうぞ。

拍手[5回]



「アスラン!」
 急に名を呼ばれて、アスランは振り返った。そこに、この場にいるはずのない少女を見つけてぎょっとする。
 ここはオーブ軍の参謀本部だ。軍人ではない彼女が歩き回る場所ではない。
「姫様!? どうしてここに」
 少女はむっと顔をしかめてから、まわりをきょろきょろと見回し、アスランの腕をつかんだ。
「いいから。ちょっと来い」
「ひ、姫様!」
 少女はアスランの青い軍服をつかみ、容赦なくぐいぐいと引っ張っていく。
 人気のない倉庫に入ったところでようやく手を放し、彼女はアスランをきっと睨みつけた。
「姫って言うなっていつも言ってるだろ」
「しかし、ここは軍の本部で――」
「じゃあ、今ならふたりだけだ。わたしたちはただの幼馴染なんだし、その話し方もやめろ」
 じろりと睨まれて、アスランは仕方ないという風にため息をついた。
「――わかったよ、カガリ」
 口調をあらためると、カガリが満足そうに笑んだ。対して、アスランの胃はきりきりと痛む。
「で、どうしておまえがここに? 今日はウズミさまはいらしてないはずだが」
 ようやく当初の疑問を口にすることができた。
 彼女は立場上、国家元首である父ウズミと時おり参謀本部にやってくることがある。しかしそれは今日ではないはずだ。
 いくら姫とは言えども、そう簡単に軍部に入り浸っていいはずがない――ふつうならば。
 しかし、ふんぞり返っているカガリの様子を見て、アスランは自分の嫌な予感が的中したことを知った。
「――またお忍びか……」
「いいだろうべつに。まだ誰にも見つかっていない」
「そういう問題じゃないんだがな」
 それに、おそらくカガリが気づいてないだけで、監視カメラやセキュリティはカガリの侵入をとらえているはずだ。たった十六の少女――それも軍人でもなんでもないナチュラル――に侵入を軍部が許しているようでは、この国は終わりである。おそらくモニター室では監視員がおてんば姫を見て苦笑していたことだろう。
 さらに胃が痛くなるのを感じているアスランをよそに、カガリがずいと顔を覗き込んでくる。
「で、アスラン。今日はおまえに頼みたいことがあるんだが」
「……」
 息がかかるほど近くなった距離に動揺する間もなく、とてつもなく嫌な予感がする、とアスランが思ったそれは、次のカガリの言葉で見事で現実になった。
「わたしは家出しようと思う。だから、おまえもついてこい」
「ことわる」
 アスランが真面目な顔で即答すると、カガリが目を丸くした。
「なんでだよ!?」
「むしろどうして承諾すると思ったのかが疑問だよ、俺は……」
 今日二度目のため息を吐く。今に始まったことではないが、この姫と一緒にいるとそのうち胃に穴が開きそうだ、と思った。
「突然どうしたんだ、家出なんて」
 家出というと、父親と喧嘩でもしたのかもしれないが、彼女のファザコンっぷりはアスランも良く知るところだ。今までも無茶な冒険や脱走は多々してきたが――そのたびにアスランはカガリの行動パターンを読むのが得意な捜索員として駆り出されてきた――家出と大それたところまでいったことはない。
 カガリの表情がわずかに翳る。
「――〝ヘリオポリス〟の一件が、どうしても納得がいかない」
 彼女が硬い表情で言うのを聞いて、アスランはなるほどと思った。
 先日、オーブの所有するスペースコロニー〝ヘリオポリス〟が崩壊した。中立国であるはずのオーブの企業モルゲンレーテがそこで地球軍のモビルスーツを開発していたため、ザフトの攻撃を受けたのだ。
 その事件の日、モビルスーツ開発の噂を聞いたカガリは、なんと単身で〝ヘリオポリス〟に乗り込んでいたらしい。崩壊に巻き込まれても無事帰国したのだが、アスランはそれをオーブで聞き、卒倒しかけた。
 彼女にしてみれば、自分の父が治める国がそのような不正を働いていたことを許せないのだろう。ウズミが一件に絡んでいるとは思い難いが、それでも責任は彼に降りかかる。地球軍との癒着を否定しない父に焦れて、食って掛かるカガリの姿が、容易に想像できた。
 カガリは伏せていた目をあげ、きっと強いまなざしになる。
「お父様に『おまえは世界を知らない』と言われた。――だから世界を見に行く」
 そこで諦めるのではなく行動に移そうとするあたり、カガリらしいと思う。
 いま世界で起こっているコーディネイターとナチュラルの戦争――もはやプラント対地球という構図になりつつある――を、中立国で育ち、軍人でもない彼女は知らない。そんな自分が父に何を進言しても無意味だと気づく聡さを彼女は持つ。そして――幸か不幸か――それを改善しようとする向上心と、行動力も。
「言っておくが、アスランが来なくてもわたしは行くぞ」
 カガリの目は真剣だった。
 これは口で説得しても無駄だな、とアスランは瞬時に悟る。
 頭のなかでレドニル・キサカ一佐――アスランの上官でありカガリのお守り部隊隊長――にどう話をつけるか考えながら、数秒おいて、三度目のため息を吐いた。
「――わかったよ」
 自分が見てないうちに国を出られるくらいなら、つきっきりで彼女のそばにいて直接守る方がまだマシだろう――と、オーブ軍内でも一目置かれる優秀な少年兵は判断し、敬愛すべき姫に首を垂れた。
「お供いたします、姫様」
「――怒るぞ」
 言うことを聞いたというのに、頬を膨らませた彼女に対し、アスランは苦笑した。
「それじゃあ、さっそく明日出発する。準備しとけよ」
「キサカ一佐から許可がおりたらな。おまえとちがって、俺は長期休暇を申請しなきゃならないんだ。少し待て」
 カガリはもどかしそうに眉をしかめたが、なにも言わなかった。
 実のところ、アスランはオーブ軍所属ではあるが、そのなかでも優秀さを買われて特務隊に所属しているため、多少の無理はきく。しかも特務隊のなかでもさらに特殊な立ち位置にいた――要するに、オーブの姫カガリ・ユラ・アスハ専属の軍人なのだ。それは上官のレドニル・キサカ一佐だけでなく、オーブ軍大将ウズミ・ナラ・アスハすらも公認している。アスランがカガリのために職務を休むと言えば、文句を言う人間はまずいない。
 それでも、一国の姫を連れてお忍びの旅をするというなら、それなりの準備が必要になる。
「準備が終わったら行くから、家で待ってろ。しばらく帰れなくなるかもしれないぞ。お転婆はやめて、すこしは休んでおけ」
「――わかったよ」
 カガリはしぶしぶといった様子で承諾した。
 しかし、彼女はすぐに太陽のような笑顔を浮かべる。もうすぐ国を出られるという事実は、彼女を興奮させるのに十分だった。
「それじゃ明日からよろしくな、アスラン!」
 そう言って、がばりとアスランの首に抱き付いてくる。
 彼女の癖でもあるそれを、アスランはごく自然に受け止めた。
「――ああ」
 彼女の背をぽんぽんと叩いてやりながら苦笑する。
 自分を異性として認識していないようなその動作に落胆しつつも、心を許してくれることには喜びを覚えた。
 彼女は国を出ると決めた際、真っ先に護衛として自分を指名したのだ。その信頼の厚さに、仕える者として嬉しさを感じずにはいられなかった。
 明日から忙しくなる。
 それでも自分の任務は変わらない。
 たとえどんな状況になっても――ただ彼女を守りとおすだけだ。




ふと思いついたので書いてみました。
カガリを「おまえ」呼びするアスランが好きです。
種カガリの抱擁癖なのですが、キラに会う前にはいったい誰に発揮されていたのでしょうか…。
この話ではアスランに発揮してもらいました。楽しかった笑

需要があれば続くかもしれません。
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プロフィール
管理人:柳瀬
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最近カラオケで種のPVを見たことをきっかけに10年ぶりにうっかりアスカガが再燃した出戻り野郎。

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