雑記やら拍手お返事やらSSやらを好き勝手に書いています。
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先日Twitterにおいて「ふぁぼされた数だけ書く予定のない小説の一部を書く」というタグで書いたSSに、ありがたくもたくさんお言葉をいただいたため、加筆修正してこちらにUPすることにしました。
ちょっと加筆するだけにしようと思っていたのに、当初の四倍以上の字数になってしまいました……何故だ笑
同じタグであと三つSSを書いたので、そちらはそのうちサイトにログとしてUPするつもりです。
種の世界において、カガリとラクスのポジション入れ替えと言うトンデモ設定です。要するにプラントで婚約者同士のアスランとカガリの話。
続きからどうぞ。
「アスラン!」
アスランが屋敷の扉をくぐると同時に、一人の少女が階段を駆け下りてきた。
少女は上品な浅葱色のドレスで着飾っているのにもかかわらず、裾を持ち上げて息を切らせて走ってくる。
容姿と行動がちぐはぐな姿にアスランが目を剥いていると、階段を下り切った彼女が視線に気づき、はっと顔を赤らめた。
そして、取り繕うように裾をおろすと、ぎこちなくも恭しい様子で礼をする。
「お、お待ちしておりました……アスラン。来てくださって嬉しいです、わ」
少女がたどたどしい口調でそう言ったあと、赤い顔のままこちらの顔色をうかがってきて、アスランは思わず苦笑する。
「ーー久しぶり、カガリ。今日はどうしたんだ?」
「う……マーナが、せっかくアスランが来るんだから淑女らしくしなきゃ嫌われるぞって言うから……」
ぼそぼそと言い訳をするカガリの姿に、アスランの胸の内があたたかくなる。
彼女にしては珍しいドレス姿とらしくない口調は、どうやら侍女のしわざらしい。
「いつもどおりでいいよ。俺もそのほうが楽だから」
「……わかった」
カガリが恥ずかしさをごまかすようにこほんと咳ばらいをし、アスランに笑顔を向けた。
「本当に久しぶり。プラントに帰ってきていたんだな」
「ああ」
アスランも微笑み返して、それからある意図を込めてカガリをじっと見つめた。彼女はアスランの視線に一度首をかしげてから、数秒後にその意味に気付いて、ふたたび顔を赤くする。それでも弱弱しくうなずいたのを見て、アスランもまたわずかに頬を赤らめてから、カガリの体に手を伸ばしそっと抱き寄せた。
「――会いたかった」
「うん……わたしも」
カガリもぎこちなく背に腕をまわしてきて、気恥ずかしくも幸福な時間が訪れる。
――それは、婚約者同士の久しぶりの逢瀬。
「今回はしばらくいられるのか?」
庭の四阿(あずまや)に移動して、カガリがアスランのカップに紅茶を注ぎながらそう聞いた。男勝りな言葉遣いとは違い、お茶を淹れる手つきはお嬢様らしく丁寧なものだ。
「どうだろうな……いちおう休暇ではあるが、いつ急な任務が入るかわからないから」
淹れてもらった紅茶に口をつけながら、アスランは正直に話す。
彼は軍人だ。休暇といっても、敵の襲撃など予測できない事態が起きれば、いつどこにいても招集がかかってしまう。
すると、カガリが見るからに肩を落とした。
「そっか……せっかくアスランが戻ってきたのにな」
「……すまない」
その様子に申し訳なくなってアスランが謝ると、カガリがはっと顔を上げた。
「いや、アスランは悪くないんだ! わたしこそごめん。おまえたちはプラントを守ってくれてるのに、こんなこと言っちゃだめだよな」
カガリは顔の前で両手を振りながら、必死になって明るく取り繕う。
その真面目な様子がほほえましくて、アスランは小さく笑みを浮かべていた。
「でも、今日は一日オフだからここにいるよ。また次の休暇にも、必ず来るから」
「本当に?」
「ああ。約束する」
アスランが頷くと、カガリがほっと安心したような表情になる。
なるべく多くの時間を共にすごしたいと思っているのはアスランも同じだ。彼女といると、戦場にいると忘れがちな平和な時間というのを思い出せる。自分が何のために――何を守るために戦っているのか、ということを忘れずにいられる。
ふと二人の間にあるテーブルに小鳥が飛んできて、カガリがそれを微笑みながら見つめた。彼女はすこしの間、指先でやさしく小鳥のくちばしをつついていたが、ふいに表情を暗くする。
「――戦争は、まだ終わらなさそうだな」
カガリが愁いを帯びた表情で言う。
アスランがなんと返そうか、と考えている間に、彼女は話をつづけた。
「わたしの友達も、たくさん軍に志願していったんだ。プラントを守りたいからって」
「……そうか」
プラントと地球の間で今起こっている戦争は、収束に向かうどころか、ますます激化していた。軍の志願者が増えているという話は、アスランも耳にしたことがある。同じ軍人として同じ志を持つ者が増えることを喜ぶべきか、こんな世の中を憂えるべきか、複雑な心境だった。
「わたしにも……なにかできたらいいのにな」
カガリはスプーンでカップの中をかきませながら、ぽつりとこぼす。
その様子に、アスランは彼女が考えていることを予測した。
「――軍に志願したい、というのは駄目だぞ」
「うっ……」
「ウズミさまにも固く禁じられているだろう」
図星だったらしく、カガリがバツの悪そうに首をすくめた。
カガリは以前、軍に志願したいと言って父親と猛喧嘩したことがあるのだ。
彼女の父、ウズミ・ナラ・アスハはプラント最高評議会の議員であり、その一人娘である彼女はお嬢様に当たる。見るからに大事に育てられている彼女を軍人にするなんて、ウズミは決して許さないだろう。彼はアスランにも「カガリが馬鹿なことを言ったら諫めてやってくれ」と言っていた。
もちろん、アスラン自身も彼女が軍人になることなど許容できない。カガリには戦場のような人の死の匂いが蔓延した場所とは無縁の世界で生きていて欲しかった。
「わかってる……もうそんなことは言ったりしないよ」
カガリが大きくため息をつきながら、机に伏して拗ねた様子を見せる。
盛装姿に反し、子供っぽいそのしぐさに苦笑しそうになるのを、アスランはなんとか堪えた。
「カガリだって、プラントの人たちを励ましているじゃないか。立派だよ」
「あれは、お父様に言われたとおりにしてるだけだから……」
カガリはもごもごとはっきりしない口調で答える。
彼女はウズミの娘として、時折メディアに顔を出していた。金の髪と金の瞳という華やかな容姿に加え、おしとやかな淑女の仮面をかぶり無垢な微笑みを浮かべている姿は、戦争のなかで沈むプラント市民たちの気分を明るくさせている。『暁の姫』と呼ばれ慕われるカガリを、アスランも婚約する前から知っていた。それゆえに、父パトリックから突然彼女が自分の婚約者だと言われた際には驚愕したものだが。
「それでも、カガリは人々の希望だ。ザフトでも『勝利の女神』なんて呼ばれてるんだぞ」
アスランが『あのカガリ・ユラ・アスハ』の婚約者であることは、プラントでは有名な話だ。アスラン自身も彼女と共に互いの父に連れられてメディアに出たことがある。
ふたりの関係は、プラントの婚姻統制の広告塔としても扱われていた。アカデミー時代から婚約に関してアスランに聞いてくる者は多く、以前は辟易としていたものだ。すべてを冷たく流しているうちに、そのような野次馬もほとんどなくなったのだが。
「うぅ……アスランに言われると、むずがゆい気分になる」
わずかに顔を上げたカガリの頬は、赤く染まっていた。
それをほほえみながら見て、アスランはあたたかい紅茶に口をつけた。
「ああいうのは、わたしの友達のほうが得意なんだよ……」
「友達?」
「そう。オーブにいる、お父様の知り合いの娘なんだけど……。ああ、わたしも彼女みたいになれたらなぁ」
カガリはぶつぶつとつぶやき、ふたたび顔をテーブルに伏した。
金の髪とつむじが目の前にきて、アスランは思わず手を伸ばして触りたい衝動に駆られたが、それをなんとか我慢する。
すると突然、はじかれたようにカガリが顔を上げた。
「そうだ! アスラン、ちょっと出かけないか?」
「これから?」
「うん。今日はオフなんだろ?」
「それはそうだが……どこか行きたいところがあるのか?」
突然の申し出に首をかしげるアスランに、カガリは小さく微笑んで答えた。
「――お母様のところに行きたいんだ」
もう少し続きます。
これと同じくらいの字数がすでに書きあがってるんですが、なかなか終わらないので分割することにしました。
初々しいアスカガが書きたかったんです……。
元々if設定を考えるのが好きなうえ、本編設定だと立場やら何やらあってなかなか純粋な気持ちでほのぼのしたものが書けないので、平和なものを書こうと思うとパロに走ってしまいます^^;
この話もそのうち原作通り父親同士が対立したりして物騒な話になっていくんでしょう…。
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