雑記やら拍手お返事やらSSやらを好き勝手に書いています。
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TwitterにUPしたものの再掲です。
三隻同盟時のくっついていないアスカガの話。
他にもTwitterで公開したあとこっちに載せれてない作品がいくつかあるんですが、なかなか手直しする気になれなくて放置してしまいます…すみません。
続きからどうぞ。
三隻同盟時のくっついていないアスカガの話。
他にもTwitterで公開したあとこっちに載せれてない作品がいくつかあるんですが、なかなか手直しする気になれなくて放置してしまいます…すみません。
続きからどうぞ。
「カガリさまぁ」
クサナギの格納庫で縋るような声で呼びとめられ、カガリは振り返った。
むくれたような、困ったような表情をしたアサギがそこにいた。
「なんだよ」
「あのですねェ、アスランさんのことなんですけど」
「アスランがどうかしたのか?」
意外な人物の名前に、思わず身構える。
曰く、アサギとジュリとマユラがたまたまエターナルを訪れた際にアスランと会い、話をしている最中に彼を困らせてしまったらしい。そのフォローをカガリに頼みに来たのだという。
「おまえら何をしたんだよ……」
「アスランさんって恋人いるんですかって聞いたんですけどォ」
そんなことだろうと予想していたカガリは、わざと大きなため息をつく。
よりによってこんなときに──アスランは先日、ラクスとの婚約を破棄したばかりなのだ。本人がそう明言したわけではないが、二人の様子から、カガリはそのことに気づいていた。泣きながらキラに縋り付いたラクスを、彼はいったいどんな気持ちで見ていたのだろうか。
アサギたちに質問されたとき、きっとアスランは答えに困ったことだろう。
オーブ国民であるアサギたちに彼の婚約事情を把握していろとは言わないが、カガリはほとほと呆れ果てた。
「あのなぁ、おまえらもうちょっと空気を読めよ……アスランにも色々あるんだ。もっと相手のことを気遣ってだな、」
「やだぁ! カガリ様にそんなこと言われるなんて!」
アサギが急に悲鳴を上げる。場違いな甲高い声に、カガリは驚いて肩を跳ねさせた。
「ショック! カガリ様ほど空気読めなくて恋愛に疎い人なんてそうそういないのにぃ!!」
「な──なんだとぉ!?」
「だってそうじゃないですかァ。あたしたちが誰のために聞いてあげたと思ってるんです? もー信じらんないっ」
「そんなの誰が頼んだ! 信じられんのはおまえらのほうだ、こっちは親切心で言ってやってるのに、言うに事欠いてそんなこと……!」
カガリは思わず噛み付こうとしたが、言い合うふたりの周りに野次馬が集まり始めたのに気付き、反射的に口を噤んだ。
アサギはというと、カガリが黙ったのを見ると、先ほどまでの狼狽はどこへやら、ウインクをして「じゃあお願いしますねェ」とちゃっかり言ってのける。
「良かったですね、アスランさんに会う口実ができて」
そんなことを言い残して、瞬く間に去っていく。
カガリはしばらくその場で怒りに震えながら、格納庫全体に響き渡るような声量で叫んだ。
「──おまえら、いつか絶対泣かす!!」
***
──別にあいつらに頼まれたからじゃない、私が気になっただけだ。
カガリはそう自分に言い聞かせながらエターナルの通路を進んだ。エターナルに来た時点でアサギの思う壺だという事実にからは、わざと気づかないふりをする。
目的の人物は自室にいた。
「カガリ?」
突然訪ねてきたカガリを、アスランは驚きながらも部屋に招き入れた。
一般兵クラスの部屋にはソファがないため、アスランはカガリをベッドに座らると、自らもその横に腰掛けた。
「どうしたんだ、急に」
「いや、その……」
カガリは言葉に迷ったが、うまい言い訳が見つからず、結局素直に言うことにした。
「……うちの奴らが迷惑かけたらしいな。悪かった」
「え?」
アスランがきょとんとして目を瞬く。数秒して思い当たったのか、「ああ」と呟いた。
「別に、気にしなくていいよ。むしろ気を使わせてしまってすまない」
「いや。悪いのは無神経だったあいつらだ。まったく、あいつらは本当に……」
言ってるうちに、先ほどのアサギの失礼極まりない発言を思い出して、胸の底がむかむかしてくる。
アスランはカガリの百面相から何を考えているのか察したのか、苦笑いをこぼした。
「賑やかだな、彼女たちは」
「ああいうのはうるさいって言うんだよ。ずかずか人の事情に立ち入ってくるしな」
「カガリは違うのか?」
「ちーがーう! 私はそんなことしない!」
「そうか」
アスランは穏やかな声で言った。その声音が少し寂しげな響きをしていたので、カガリは思わず彼の顔を覗き込む。
「なに、カガリ?」
「……いや、おまえこそ」
アスランも自分の感情に戸惑っているのか、カガリに困ったように笑って見せた。
「なんて言えばいいのかな……言葉にするのが難しいんだけど」
「うん」
「……カガリやアサギさんたちを見てると不思議な気分になるんだ。ああいう賑やかで、よく喋る人たちは、兵士の中にはいなかったから」
キラから聞いた限りでは、アスランは小さな頃からあまり多くの交友関係を持っていなかったらしい。大人になる前に戦争が始まり、彼は軍へと身を投じたが、それからも一匹狼であり続けたことは想像に難くない。
そんなアスランにとって、カガリやオーブの人間たちはとても不思議な存在だった。
「それだけじゃない。キラも、アークエンジェルの人たちも……よく喋って、笑って、今が戦争中なことなんて忘れたみたいにしていて……そういうのが」
アスランはそこで一度言葉を切り、噛み締めるように呟いた。
「なんだろう……平和だな、って思うんだ、すごく」
彼の言葉は暖かなものだったが、同時に一抹の寂しさを湛えていた。
平和──それは、争いに満ちたこの世界においてアスランが持ち得なかったものだ。
「……そっか」
カガリは静かに頷いた。
隣にいるアスランの存在が、すぐ隣にいるはずなのに、とても遠くに感じられた。──その距離を埋めたいと思った。
「じゃあ、守らないとな」
「え?」
「そのために私たちは今ここにいるんだろう?」
アスランが驚いた様子でカガリを見つめる。カガリはそれに明るい笑みを返した。
この宇宙の隅で、たった三隻の艦で彼女らは戦っている。──他でもない、平和な世界を得るために。
それでもカガリたちはひとりではなかった。数は少なくとも味方がいる。同じ夢を見て、同じ志を抱いた仲間たちがいる。
──一緒に笑いあえる相手が、すぐ隣にいる。
「そうだな……守りたいよ」
アスランが小さく微笑み、カガリから視線を外した。
カガリもまたアスランを見ない。その代わりに、アスランの肩に自分の肩をくっつけ、寄りかかった。
頬を寄せた彼の肩はあたたかく、できればずっとこのままでいたいと思った。
***
アスランに平和だな、って言わせたかっただけの話。
きっとアスランは戦争の中でそういう穏やかな時間っていうのを忘れていたんじゃないかな、と思って。
戦争の中で、ほんの少しでもアスランが笑える時間があったらいいなと思います。
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