雑記やら拍手お返事やらSSやらを好き勝手に書いています。
先日Twitterにおいて「ふぁぼされた数だけ書く予定のない小説の一部を書く」というタグで書いたSSに、ありがたくもたくさんお言葉をいただいたため、加筆修正してこちらにUPすることにしました。
ちょっと加筆するだけにしようと思っていたのに、当初の四倍以上の字数になってしまいました……何故だ笑
同じタグであと三つSSを書いたので、そちらはそのうちサイトにログとしてUPするつもりです。
種の世界において、カガリとラクスのポジション入れ替えと言うトンデモ設定です。要するにプラントで婚約者同士のアスランとカガリの話。
続きからどうぞ。
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「アスラン!」
アスランが屋敷の扉をくぐると同時に、一人の少女が階段を駆け下りてきた。
少女は上品な浅葱色のドレスで着飾っているのにもかかわらず、裾を持ち上げて息を切らせて走ってくる。
容姿と行動がちぐはぐな姿にアスランが目を剥いていると、階段を下り切った彼女が視線に気づき、はっと顔を赤らめた。
そして、取り繕うように裾をおろすと、ぎこちなくも恭しい様子で礼をする。
「お、お待ちしておりました……アスラン。来てくださって嬉しいです、わ」
少女がたどたどしい口調でそう言ったあと、赤い顔のままこちらの顔色をうかがってきて、アスランは思わず苦笑する。
「ーー久しぶり、カガリ。今日はどうしたんだ?」
「う……マーナが、せっかくアスランが来るんだから淑女らしくしなきゃ嫌われるぞって言うから……」
ぼそぼそと言い訳をするカガリの姿に、アスランの胸の内があたたかくなる。
彼女にしては珍しいドレス姿とらしくない口調は、どうやら侍女のしわざらしい。
「いつもどおりでいいよ。俺もそのほうが楽だから」
「……わかった」
カガリが恥ずかしさをごまかすようにこほんと咳ばらいをし、アスランに笑顔を向けた。
「本当に久しぶり。プラントに帰ってきていたんだな」
「ああ」
アスランも微笑み返して、それからある意図を込めてカガリをじっと見つめた。彼女はアスランの視線に一度首をかしげてから、数秒後にその意味に気付いて、ふたたび顔を赤くする。それでも弱弱しくうなずいたのを見て、アスランもまたわずかに頬を赤らめてから、カガリの体に手を伸ばしそっと抱き寄せた。
「――会いたかった」
「うん……わたしも」
カガリもぎこちなく背に腕をまわしてきて、気恥ずかしくも幸福な時間が訪れる。
――それは、婚約者同士の久しぶりの逢瀬。
「今回はしばらくいられるのか?」
庭の四阿(あずまや)に移動して、カガリがアスランのカップに紅茶を注ぎながらそう聞いた。男勝りな言葉遣いとは違い、お茶を淹れる手つきはお嬢様らしく丁寧なものだ。
「どうだろうな……いちおう休暇ではあるが、いつ急な任務が入るかわからないから」
淹れてもらった紅茶に口をつけながら、アスランは正直に話す。
彼は軍人だ。休暇といっても、敵の襲撃など予測できない事態が起きれば、いつどこにいても招集がかかってしまう。
すると、カガリが見るからに肩を落とした。
「そっか……せっかくアスランが戻ってきたのにな」
「……すまない」
その様子に申し訳なくなってアスランが謝ると、カガリがはっと顔を上げた。
「いや、アスランは悪くないんだ! わたしこそごめん。おまえたちはプラントを守ってくれてるのに、こんなこと言っちゃだめだよな」
カガリは顔の前で両手を振りながら、必死になって明るく取り繕う。
その真面目な様子がほほえましくて、アスランは小さく笑みを浮かべていた。
「でも、今日は一日オフだからここにいるよ。また次の休暇にも、必ず来るから」
「本当に?」
「ああ。約束する」
アスランが頷くと、カガリがほっと安心したような表情になる。
なるべく多くの時間を共にすごしたいと思っているのはアスランも同じだ。彼女といると、戦場にいると忘れがちな平和な時間というのを思い出せる。自分が何のために――何を守るために戦っているのか、ということを忘れずにいられる。
ふと二人の間にあるテーブルに小鳥が飛んできて、カガリがそれを微笑みながら見つめた。彼女はすこしの間、指先でやさしく小鳥のくちばしをつついていたが、ふいに表情を暗くする。
「――戦争は、まだ終わらなさそうだな」
カガリが愁いを帯びた表情で言う。
アスランがなんと返そうか、と考えている間に、彼女は話をつづけた。
「わたしの友達も、たくさん軍に志願していったんだ。プラントを守りたいからって」
「……そうか」
プラントと地球の間で今起こっている戦争は、収束に向かうどころか、ますます激化していた。軍の志願者が増えているという話は、アスランも耳にしたことがある。同じ軍人として同じ志を持つ者が増えることを喜ぶべきか、こんな世の中を憂えるべきか、複雑な心境だった。
「わたしにも……なにかできたらいいのにな」
カガリはスプーンでカップの中をかきませながら、ぽつりとこぼす。
その様子に、アスランは彼女が考えていることを予測した。
「――軍に志願したい、というのは駄目だぞ」
「うっ……」
「ウズミさまにも固く禁じられているだろう」
図星だったらしく、カガリがバツの悪そうに首をすくめた。
カガリは以前、軍に志願したいと言って父親と猛喧嘩したことがあるのだ。
彼女の父、ウズミ・ナラ・アスハはプラント最高評議会の議員であり、その一人娘である彼女はお嬢様に当たる。見るからに大事に育てられている彼女を軍人にするなんて、ウズミは決して許さないだろう。彼はアスランにも「カガリが馬鹿なことを言ったら諫めてやってくれ」と言っていた。
もちろん、アスラン自身も彼女が軍人になることなど許容できない。カガリには戦場のような人の死の匂いが蔓延した場所とは無縁の世界で生きていて欲しかった。
「わかってる……もうそんなことは言ったりしないよ」
カガリが大きくため息をつきながら、机に伏して拗ねた様子を見せる。
盛装姿に反し、子供っぽいそのしぐさに苦笑しそうになるのを、アスランはなんとか堪えた。
「カガリだって、プラントの人たちを励ましているじゃないか。立派だよ」
「あれは、お父様に言われたとおりにしてるだけだから……」
カガリはもごもごとはっきりしない口調で答える。
彼女はウズミの娘として、時折メディアに顔を出していた。金の髪と金の瞳という華やかな容姿に加え、おしとやかな淑女の仮面をかぶり無垢な微笑みを浮かべている姿は、戦争のなかで沈むプラント市民たちの気分を明るくさせている。『暁の姫』と呼ばれ慕われるカガリを、アスランも婚約する前から知っていた。それゆえに、父パトリックから突然彼女が自分の婚約者だと言われた際には驚愕したものだが。
「それでも、カガリは人々の希望だ。ザフトでも『勝利の女神』なんて呼ばれてるんだぞ」
アスランが『あのカガリ・ユラ・アスハ』の婚約者であることは、プラントでは有名な話だ。アスラン自身も彼女と共に互いの父に連れられてメディアに出たことがある。
ふたりの関係は、プラントの婚姻統制の広告塔としても扱われていた。アカデミー時代から婚約に関してアスランに聞いてくる者は多く、以前は辟易としていたものだ。すべてを冷たく流しているうちに、そのような野次馬もほとんどなくなったのだが。
「うぅ……アスランに言われると、むずがゆい気分になる」
わずかに顔を上げたカガリの頬は、赤く染まっていた。
それをほほえみながら見て、アスランはあたたかい紅茶に口をつけた。
「ああいうのは、わたしの友達のほうが得意なんだよ……」
「友達?」
「そう。オーブにいる、お父様の知り合いの娘なんだけど……。ああ、わたしも彼女みたいになれたらなぁ」
カガリはぶつぶつとつぶやき、ふたたび顔をテーブルに伏した。
金の髪とつむじが目の前にきて、アスランは思わず手を伸ばして触りたい衝動に駆られたが、それをなんとか我慢する。
すると突然、はじかれたようにカガリが顔を上げた。
「そうだ! アスラン、ちょっと出かけないか?」
「これから?」
「うん。今日はオフなんだろ?」
「それはそうだが……どこか行きたいところがあるのか?」
突然の申し出に首をかしげるアスランに、カガリは小さく微笑んで答えた。
「――お母様のところに行きたいんだ」
もう少し続きます。
これと同じくらいの字数がすでに書きあがってるんですが、なかなか終わらないので分割することにしました。
初々しいアスカガが書きたかったんです……。
元々if設定を考えるのが好きなうえ、本編設定だと立場やら何やらあってなかなか純粋な気持ちでほのぼのしたものが書けないので、平和なものを書こうと思うとパロに走ってしまいます^^;
この話もそのうち原作通り父親同士が対立したりして物騒な話になっていくんでしょう…。
誰だ更新停滞するとか言ってたやつ←
書いちゃいけない、と思うと不思議とネタが浮かんできますよね……。
炊飯器が炊けるのを待ってる間、ふと思いついたネタ。Twitterに上げるつもりでいたんですけど、ちょっと長くなったのでこちらへ。
運命直後のアスランとシンの話です。例のごとくアスカガ前提!
アスランとシンがコンビの中で一番好きかもしれない……。
書いちゃいけない、と思うと不思議とネタが浮かんできますよね……。
炊飯器が炊けるのを待ってる間、ふと思いついたネタ。Twitterに上げるつもりでいたんですけど、ちょっと長くなったのでこちらへ。
運命直後のアスランとシンの話です。例のごとくアスカガ前提!
アスランとシンがコンビの中で一番好きかもしれない……。
「そんなにアスハが大事かよ……」
赤い瞳に睨まれても、アスランは動じなかった。
「なんでです? あんたはプラントの人間だろ!? 今だってザフトはあんたの復帰を希望してる! ザフトもプラントも生まれ変わらなきゃいけないからって必死で、あんたに助けを求めてるっていうのに、なんで……!」
アスランのまとうオーブの軍服を、まるで親の仇だとでもいうように鋭い眼差しで睨みつけるシン。
終戦後、機体が壊れて月面で難儀していたシンとルナマリアを、アスランはエターナルへと連れ帰った。それから数日、ようやく停戦への道が開けて、保護した彼らを帰そうと思っていた今、突然シンがアスランのもとに駆け込んできたのだ。
彼の言ったことは事実だ。デュランダルを失ったプラントは、ラクス・クラインとアスラン・ザラの離反の罪を帳消しにした。そして、新たな指導者と改革を求めて『英雄』たちの帰還を望んでいる。
しかし、それをアスランは拒否した。
「俺はもうプラントには戻らない」
「そしてオーブに行くんですか。あんたから地位も力も奪っていたあの女のもとへ!? なんでだよ……!」
シンは殴りかからんばかりの勢いで詰め寄ってくる。
それをどうなだめようかと考えている最中、ふいにアスランの中にある記憶がよみがえった。
『おまえ、なんでプラントになんか戻るんだよ!? だって、あれ置いて戻ったりしたら、おまえどうなるか……!』
かつて、自分を心配して掴みかかってきた少女と、いつも言うことを聞かなくて突っかかってくる目の前の元部下。全然似てはいないけれども、不思議とアスランの中でそれが重なった。自分が昔の彼女と同じことをしていると知ったらきっとシンは卒倒するだろうな、と考えて、アスランの口元に知らず笑みが浮かぶ。
「――おまえが誰かを守りたいと思う気持ちと同じだよ」
「そんなこと……っ」
「たとえ敵対していても、どうやったってそばにいられないって知ってても、守りたいと思うものがあるんだ」
「……っ!」
アスランが静かな口調で言うと、シンがはっと息を呑んだ。その気持ちは、きっと彼にも覚えがあるはすだ。
途端に勢いをなくしたシンに、微笑みかける。
「プラントはおまえが守れ、シン。おまえならできる。この戦いの中で、色々学んだだろう」
「っ、……おれは……」
シンはきまり悪そうに目を逸らす。
この戦いを経て、彼の正義と〝力〟の使い方は大きく揺らいだ。シンはいまだに迷っているのだろう。
それでいい、とアスランは思う。迷って、苦しんで、そうして自分の信じる道をもう一度探し直せばいいのだ。シンならきっと探し出せるだろう。
それでいい、とアスランは思う。迷って、苦しんで、そうして自分の信じる道をもう一度探し直せばいいのだ。シンならきっと探し出せるだろう。
「その気になったらオーブへ帰ってこい。カガリもきっと待っている」
シンは俯いたまま答えなかった。
素直じゃないところもいつかの誰かさんとそっくりだ、と頭の隅でアスランは思い、ほほえましい気分になった。
「――おまえは昔のあいつによく似てるよ」
「はあ!? そんなわけないでしょう!」
『あいつ』が誰なのかすぐにわかったらしく、弾かれたように顔を上げて噛み付いてくるシンに、思わず苦笑する。
「オーブのこと、好きだろう?」
それだけ言い置いて、アスランは踵を返した。
最後に見たシンは目を見開いて唖然としていて、ややあって背後で彼が盛大に憤る気配がする。
「この……っ、好きなもんか! あんなやつッ!!」
怒鳴った彼は、きっと真っ赤な顔をしているのだろう。
それでこそシンらしい――とアスランはひとり笑みを浮かべた。
シンと自分の帰る場所は違う。
でも、いつかそれが同じになればいい。
あの南海に浮かぶ島で彼と再会する日は、そう遠くないような気がした。
突貫工事のわりには結構気に入る感じにまとまったので満足です。
このふたりは、ジエッジのディオキア前後の関係性が死ぬほど好きで何度も読み返しています。ツンツンしてるシンをあしらうアスランがデフォで、シンが機嫌いい時は犬のようにアスランについてまわるあの感じ。シンちゃんかわいいいいいい!!
ジエッジはシンちゃんの心境がはっきり書かれてて素晴らしいですよね。アスランを落としたときとか号泣してて……。
スパロボでのシンちゃんは完全にわんこで最高です。
相手によって懐いたり懐かなかったり、キラにはしっぽ降るのにアスランにはたまに噛みつくあの感じ。アスランは動物の飼い方でも勉強したらいいんじゃないかな←
何が言いたいかと言うと、私はシンちゃんが大好きだよ!!!ってことです←
ふと思いついたので書いてみたもの。
就寝前、ベッドに横になったときに思いついて、その勢いで起きて書き上げたので、睡眠時間が一時間減りました笑
運命後、ある事件により記憶喪失になったカガリをシンが護衛しつつ面倒見るというトンデモ設定です。一応アスカガ前提のシン+カガですが、アスランは今回出てきません。
突然始まり突然終わります注意!
就寝前、ベッドに横になったときに思いついて、その勢いで起きて書き上げたので、睡眠時間が一時間減りました笑
運命後、ある事件により記憶喪失になったカガリをシンが護衛しつつ面倒見るというトンデモ設定です。一応アスカガ前提のシン+カガですが、アスランは今回出てきません。
突然始まり突然終わります注意!
コンコン、と雑なノックの音がして、返事をする前に扉が開かれた。
「おはよーございます」
昨日と変わらぬ仏頂面で部屋に入ってきたのは、黒い髪と赤い目を持った青年。
三日前に出会った彼は、シンと名乗った。
「おは、よう」
ぎこちなく挨拶を返したカガリを気にもせず、シンはずかずかとベッドまで近づいてきて、上半身を起こした彼女の手をとる。
ベッドのそばに置いた椅子に腰かけ、サイドテーブルから小さな機械と体温計を取り出し、体温計をカガリに差し出してきた。
「はい。熱はかってください」
「……わかった」
いつでもぶっきらぼうなその声は、どう対応すればいいのかと、カガリを困惑させる。
とりあえずと体温計を脇にはさんだところで、シンがカガリの指先に機械をとりつけ、なにやら紙に書きこんでいた。何をしているのかと聞いたカガリに、「あんたの体調管理には一番気を使え、って上司に言われてるんです」とすこし嫌そうな顔をして彼が言ったのは昨日のことだ。
朝の日課のチェックを済ませると、シンが彼女に着替えを手渡し、「ひとりでできますよね」と言いおいて部屋を出ていった。
カガリは素直にそれに従い、寝間着を脱いで渡された服に袖をとおす。
不思議とサイズがぴったりな服に着替え終わったところで声をかけると、シンが再び部屋をのぞきこんだ。
「それじゃ、朝飯にしますよ。下まで降りてこられますか」
「ああ」
カガリはベッドから足を下ろし、立ち上がろうと力をこめた。
しかし、腰を浮かしたとたんに足から力が抜け、床にへたりこんでしまう。
「あ、れ……?」
思うように足に力が入らず戸惑うカガリをよそに、すこし離れて見ていたシンは大きくため息をついた。
「――まずは歩くリハビリからしなきゃいけないか……」
黒い髪をくしゃくしゃと片手でかき混ぜ、彼はカガリのそばまで歩み寄る。
そういえば、カガリがベッドから降りたのは、この屋敷に来てから初めてのことだった。一昨日は目覚めたばかりで意識が朦朧としており一日寝たきりだったし、昨日は意識こそはっきりしたものの療養のためにとベッドの上で食事をして暮らしていた。それより前、カガリが覚えていない間もずっと寝たきりでいたようで、筋力が衰えてしまっているのだろう。
シンはカガリの前の膝をつき、わずかに顔をしかめた。
「……これは不可抗力なんだから、あの人に怒られるいわれはないよな」
ぼそりとそう言った彼に、カガリが何のことかと問おうとした瞬間、体がふわりと浮いた。
シンがおもむろにカガリを抱き上げたのだ。
「なっ!?」
「――適当につかまっててください。さらに怪我なんかされちゃたまりませんから」
彼は心底面倒くさそうに言うが、どうやらカガリを気遣っているらしかった。
カガリはすこし迷ったが、不安定な体勢にたえられず、シンの肩につかまる。彼は何も言わずにそれを受け入れて、彼女を抱いたまま部屋を出た。
ここでシンと暮らし始めて、今日で三日になる。彼はずっとこの調子だった。
この孤島にある屋敷には、カガリとシンのふたりきりしかいない。
シンはカガリに「カガリ」と言う名前と、大きな事故に巻き込まれたのだということ、そのおりに記憶を失ってしまったこと、長らく意識が戻らずにいたこと、体が回復するまではひとまずこの屋敷で暮らすのだということだけを告げた。
自分はカガリの友人の部下であり、面倒を見るように言われたのだ、とシンは言う。そのとき彼の顔には不本意たまりません、とありありと書いているように見えた。シンの態度は決して友好的なものではなく、敬語は使うもののその口調は粗野なもので、不愛想で仏頂面を絶やさなかった。それでも、行動ではカガリの世話をしてくれているため、どう接すればいいのかと彼女を余計に困惑させた。
別に乱暴にされているとか、ないがしろにされているなどということはない。むしろ、粗野に扱っているように見えて、その実カガリが不自由しないようにと彼が気を使ってくれているようにすら思えた。今だって、歩けないカガリをわざわざ抱き上げてまで運んでくれているのだ。きっとそのことを口にしたら、彼は嫌そうな顔をするだろうから、黙っているけれども。
無駄に広い屋敷の廊下を歩き、階段を下り、また廊下を移動して、彼は食卓の椅子へとカガリを座らせた。そして目の前にあらかじめ用意していたらしい朝食の乗ったトレイと、コーヒーを淹れたマグカップを置く。
「言っときますけど、ちゃんとした飯が出るのはこれで最後ですから」
シンは自分の食事も用意し、向かいに座りながら話した。
「料理できる人に作りおきしてもらったぶんは、これで終わりなんで。昼からは……まあ食べられはしますけど、大してうまくも豪華でもないもんが出ると思っててください」
「ひょっとして、シンがつくるのか?」
カガリが聞くと、シンは盛大に眉間にしわを寄せた。
「そうですよ。――ったく、あの人たちはおれを何だと思ってんだ、本当に! 料理なんてできると思ってんのかよ」
シンは吐き捨てるようにひとりごちて、苛立ちを隠さず雑な動作で食事を口に運び始めた。
それを見て、カガリも朝食に手を付ける。
シンはたびたび一人で愚痴を言っている。どうやらそれは彼にカガリの世話を頼んだという上司のことらしかった。
そのたびにカガリは申し訳ないような気分になって、二日目に思わずシンに謝ったのだが、彼は少しの間沈黙したあと、あんたに言っても仕方ないんでしばらくおれで我慢してくださいと返しただけだった。
やはり、シンとの接し方はわからない。嫌われているのかとも思ったが、行動からしてみると、一概にはそうは言えないようだった。だが好かれているとも思い難い。ひょっとしたら、シンは誰に対してもこんな人間なのかもしれないが、そう断定するにはカガリにはシンの知識がなさすぎる。
距離を測りかね、必要最低限の会話しか許されていないような気がして、自分のことを尋ねることもできずにいた。自分はどんな人間だったのか、何故事故にあったのか――そういった大事な情報を、まだカガリはまったく知らなかった。
あたためられた食事を口にしつつ、ひとり思案する。
「――あのさ、シン」
すこし考えてから口をひらくと、シンが黙って顔を上げた。
「その、食事くらいなら、わたしが作るよ」
「……あんた今自力で立つこともできないじゃないですか」
シンが頬杖をつき、呆れたように言う。
しかしカガリは折れなかった。
「それは、ちゃんとリハビリするから。できるようになったやらせてほしい」
「料理なんてできるんですか?」
「……できなくはないと思う」
記憶はないけれど、ふたりぶんの簡単な食事くらいは作れるだろう、とカガリはうなずく。
シンは額を押さえるようにして、なにやら考え込んでいるようだ。
「――この人に料理とか雑用なんかさせたら、おれ撃たれたりしないよな……それくらいはわかってるか、あの馬鹿上司も……」
ぶつぶつと呟いてから、シンはカガリを見た。
「わかりました。それじゃ、まず今日はリハビリからってことで」
「――ありがとう」
カガリが思わずつぶやいた感謝の言葉に、シンは一瞬目を丸くしたようだが、何も言わずに食事を再開した。
そんな彼を見ながら、カガリはほっと胸をなでおろす。
さすがに、シンひとりに何もかもをさせているようでは、申し訳なくて仕方がなかったのだ。しかし、これで自分も何かをすることができる。料理でも洗濯でも、できるかぎりのことをすれば、そのぶんシンの負担を減らしてやれるだろう――そう思うと、なにも分からない日々のなかでも、すこし気分が明るくなった。
ふと、カガリの世話をするシンちゃんを書いてみたいなあと思いまして……。
オフでやらなきゃいけないことが溜まってると現実逃避したくなりますね←
シンにカガリを無理やり任せた上司というのはもちろんアスランとキラです笑
上司からの理不尽な命令にぶつくさ文句言いつつも従ってるシンちゃん。
こんなシン+カガが見たいなあって……(丸投げ)
イマイチ敬語使えてないシンちゃん大好きです。
続くかどうかは未定。一応大まかな流れは考えてはいるので、アスランが出てくるあたりまでは書いてみたいのですが……。
最近書きかけばっかりで申し訳ありません(ノД`)・゜・。
ふだんならUPするかどうか悩むような話も、ブログだったら許されるかな…
せっかく時間があるので一日一アスカガを頑張りたい……!
いつもながら駄文ですみません。
趣味に走ったらこんなんばっかになりそうです。
※暗い話です。キラもアスランも病んでるので注意。
黒アスランも黒キラも大好物!と言う方は続きからどうぞ。
せっかく時間があるので一日一アスカガを頑張りたい……!
いつもながら駄文ですみません。
趣味に走ったらこんなんばっかになりそうです。
※暗い話です。キラもアスランも病んでるので注意。
黒アスランも黒キラも大好物!と言う方は続きからどうぞ。
「俺はだめかもしれない」
〝アークエンジェル〟の展望デッキで、アスランが頭を抱えながらそう言った。
ぼくはそれを黙って聞いている。
「――憎いんだ、敵が」
アスランが喉から絞り出すような声を出す。とても苦しそうだった。
「敵って?」
ぼくは思わず聞いてしまった。
『敵』という言葉を彼が使うのは、とても珍しいから。アスランはずっとその言葉に敏感になっていたような気がする。
「大西洋連邦と……ひょっとしたら、ザフトも」
祖国までもが憎い、と彼は言った。
彼が一度オーブを抜けてまで守ろうとしたものを、こうまで憎ませたのは。
「カガリを殺そうとするものすべてが、憎い」
ダーダネルスやクレタで、時にはオロファトで。
連合もザフトも、みんなカガリを殺そうとした。カガリを守ろうとしたのは、〝アークエンジェル〟とオーブ――セイラン家を除く――くらいだ。
アスランは、それが許せないのだろう。何よりも大事な彼女に銃を向けるものたちを。
「――全部滅ぼしてやろうかと思った」
怒りからか、アスランの手が震える。
言いながらも、アスランは知っているのだ。それが間違っていることを。カガリがそれを望まないことを。
そして――その気になれば、実現できてしまうほどの力が、自分にはあることを。
ぼくは彼を哀れに思った。
アスランは真面目で、正義感が強いから、そんな自分が許せないんだ。
実は激情家で、つい感情で動いてしまうときがあるくせに、理屈屋で強靭な理性を持っている。彼はいつも理性と本音の間で揺らいでいる。
でも、ぼくは――。
「ねえ、アスラン」
ぼくが呼ぶと、アスランは黙って顔を上げた。眉間にしわを寄せて、苦しそうな表情をして。
「ぼくが戦闘に介入すると、戦いが変わっちゃうんだよ」
突然なにを、とアスランの目が聞いてくるから、ぼくは笑顔を返した。
ずっとそうだった。ダーダネルスでもクレタでもオーブでも。その前の戦争でだって。ぼくが戦いに参加するだけで、どんな戦局でも変わってしまう。
そしてそれは、アスランだって同じだ。だってぼくらには力があるから。
「――ぼくらで全部、壊しちゃおうか」
まるで明日の天気の話をするかのように、それはぼくの口からこぼれた。
「キラ」
アスランの声に非難の響きが混じる。
でもね、知ってるよ、アスラン。きみだってそう望んでるんだって。
もしも――もしもカガリが本当に殺されたりなんかしたら、きみは理性を捨てて、すべてを破壊するんだろう。ぼくと一緒に。
今はまだ、ぎりぎり理性が勝っているだけの話。
「ぼくとアスラン――〝フリーダム〟と〝ジャスティス〟なら、たぶんできるよ」
ぼくらは親友だから、よく似てる。
アスランとぼくは同じことを考えている。
ただ、ぼくは――ぼくは世界を壊すことを考えるのに、罪悪感なんて持たないけど。
だって、ぼくはたくさん世界に奪われた。友達も。守りたかったひとも。両親も。――ふつうの人生も。
生まれたときから、奪われていた。
全部破壊したら、世界は平和になるのかな。
わからないけれど、こんなひどい世界は嫌だった。
「なんでみんな……ラクスやカガリを殺そうとするんだろう。こんな世界、ぼくは嫌いだ」
ラクスもカガリも、一生懸命やっているだけなのに。
平和を望んで生きているだけなのに。
世界は残酷で、ぼくたちにひどくて、彼女たちを殺そうとする。
ぼくとアスランから、大切な人を奪おうとする。
「でも、そうしたら――カガリが泣く」
アスランが呻くような声を出す。
カガリが泣くのは、アスランがもっとも望まないことだ。カガリが大切で大切で仕方がないから。
それはぼくも同じ。きっとぼくたちが世界を壊したりなんかしたら、敵を全部殺したりなんかしたら、ラクスだって泣くだろう。そしてもうぼくらを許してくれないかもしれない。
それは嫌だ。
ぼくもアスランも、何も理由なく世界を壊したいなんて思ったりしない。
ただ、カガリとラクスを守りたいだけ。ふたりに笑っていてほしいだけ。
それだけなのに――世界は許してくれないんだ。
「たとえば、連合を全部潰せば終わりだったなら、良かったんだ」
アスランが両手をじっと見つめながら言う。
「それでカガリが笑ってくれるなら、俺は喜んで敵を殺すよ。一刻も早く。迅速に」
そうだね、きみならそうすると思う。
『英雄』と呼ばれたアスランなら、そんなこと簡単だ。きっと本気のアスランにモビルスーツで勝てる人なんていない。最高のコーディネイターであるぼくだって負けたんだから。
「相手がザフトでも、俺はかまわない」
アスランは前の大戦でプラントを捨てた。プラントに裏切られて、手元に残ったのはカガリとカガリに対する愛情だけだった。アスランはそれにすがるしかなかった。
「俺にできることで、カガリが笑ってくれるならなんだってする」
アスランにとっての『世界』はカガリだ。
ぼくにとってのそれがラクスとカガリであるのと同様に。
「どうして……うまくいかないんだろうな」
アスランが悔しそうに拳を握りしめて、吐き捨てる。
たとえば。
たとえばの話。
ぼくとアスランで、ラクスとカガリをどこかにさらってしまえたら。
そして四人だけで平穏に暮らせたら、それだけでぼくらはもう何も望まないのに。
やはり、彼女たちはそれを許してはくれないのだろう。
だから。
「アスラン、議長を倒そう」
ぼくたちはもうすぐザフトとの戦闘に入る。
デュランダル議長が、やっぱり、ラクスとカガリを殺そうとするから。
正直デスティニープランなんてどうでもいいし、こんな世界がどうなろうと知らない。
でも、ラクスとカガリを殺させるわけにはいかない。
だからぼくとアスランは、力を使って敵を倒す。必死に理性で自分を押さえながら、敵をなるべく殺さないようにしながら。
ああ――ラクスさえ「はい」と言ってくれれば、ぼくは敵をすべて一掃するのに。
やさしいきみはそうしてはくれない。
「それからぼくらで、ラクスとカガリを守ろう」
今までそうしてきたように。
そうすることでしか、ぼくらは生きていけないから。
「――ああ」
アスランが答える。殺意を湛えた目をして、拳をぎゅっと握りしめて、窓の外を見る。
そこには青い星があった。残酷なぼくらの世界があった。
ねえ、ぼくの大嫌いな世界。
お願いだから、ふたりを奪わないで。
ぼくたちが世界を壊してしまわないように。
――それはぼくらの世界の失くし方。
サイトに上げている「君の世界の壊し方」のキラバージョン的な……?
「君の世界の壊し方」はアスラン→カガリの話ですが、これはキラから見たアスランの話になります。つながってはいません。
こう、たまには病んでるアスランとキラを書きたかったんです……
校正もそこそこにもったいない精神で上げてしまいました。
ふたりとも、自分の世界の全てと言っていい存在である愛する人を何度も殺されかかっているので、こんな風に自暴自棄な考え方になってもおかしくはないはず。
アスランはやはりパトリック・ザラの息子として似たような狂気を持っていると思います。
そして、それを自覚しつつカガリに依存しつつ、自己嫌悪しながら必死に狂気を理性で抑えているイメージ。それらをすべて理解できるのはキラくらい。
キラが狂うとしたら、彼にとって大事なもの(ラクスとカガリ)以外はすっぱり切り捨ててしまうんじゃないかなあ、と。
ほかにもカガリ→アスランの話が浮かんでるので、いつか書けたらいいな。
こんばんは。
私の体調を心配して下さる方がいらっしゃって、とてもありがたいです。
昨夜19日の21時に拍手にてお大事にとの嬉しいお言葉をくださった方、本当にありがとうございます( ;∀;)こんな辺境のサイトまでいらして下さった上、お気にかけて頂いて嬉しいです。
体調の方は、ぼちぼち回復していっています。
そろそろふつうに出かけられるようになるんじゃないかな?
はやくガンカフェに行きたい!笑
あと、昨日の考察にもぱちぱち拍手を送ってくださり、ありがとうございます!
ブログって本当に便利で、今になって作ってよかったと実感しています笑
結構いろいろ考えていることはあるので、また書きたいと思います。
さて。先日のアスカガ幼馴染パロ、続きました。
たくさんコメントをいただき、ありがとうございます(*´ω`*)
励みになります。思わずささっと続きが浮かんで書いてしまいました笑
今回はバナディーヤ編と銘打っていますが、実際にはぎりぎりそこまでいってません。
正確に書くとタッシルかな? とりあえず砂漠の虎周辺の話を書きたかった。
キラ視点で、アスカガとキラの出会いがメインです。
思ったより話が弾んでしまって、アスカガ要素が薄くなったうえ、本来書く予定のところまでいきませんでした…すみません。続きはちゃんとアスカガになると思います。
物語の都合上、本来の展開をいくつか省略していますが、ご了承ください。
私の体調を心配して下さる方がいらっしゃって、とてもありがたいです。
昨夜19日の21時に拍手にてお大事にとの嬉しいお言葉をくださった方、本当にありがとうございます( ;∀;)こんな辺境のサイトまでいらして下さった上、お気にかけて頂いて嬉しいです。
体調の方は、ぼちぼち回復していっています。
そろそろふつうに出かけられるようになるんじゃないかな?
はやくガンカフェに行きたい!笑
あと、昨日の考察にもぱちぱち拍手を送ってくださり、ありがとうございます!
ブログって本当に便利で、今になって作ってよかったと実感しています笑
結構いろいろ考えていることはあるので、また書きたいと思います。
さて。先日のアスカガ幼馴染パロ、続きました。
たくさんコメントをいただき、ありがとうございます(*´ω`*)
励みになります。思わずささっと続きが浮かんで書いてしまいました笑
今回はバナディーヤ編と銘打っていますが、実際にはぎりぎりそこまでいってません。
正確に書くとタッシルかな? とりあえず砂漠の虎周辺の話を書きたかった。
キラ視点で、アスカガとキラの出会いがメインです。
思ったより話が弾んでしまって、アスカガ要素が薄くなったうえ、本来書く予定のところまでいきませんでした…すみません。続きはちゃんとアスカガになると思います。
物語の都合上、本来の展開をいくつか省略していますが、ご了承ください。
「さっきは悪かったな」
仏頂面をしてキラのもとに訪れたのは、先ほど〝ストライク〟から降りてきたばかりのキラの頬を張り飛ばした少女――カガリだった。
「殴るつもりはなかった……わけじゃないが、あれははずみだ。許せ」
「いや、えっと……」
彼女は謝っているつもりなのだろうが、態度はまるでそう思えないようなものだ。
しかも、最初は思いっきり殴りかかってきたくせに、それをキラが避けたことによりはずみでたまたまキラを殴ってしまったことには、申し訳ないと彼女は感じているらしい。
変に真面目なカガリの性格に、思わずキラが苦笑すると、彼女がむっと眉を寄せた。
「なにがおかしい!」
またもや喧嘩腰に口を開こうとしたカガリを諫めたのは、彼女の後ろにいた少年だ。
「カガリ、それで謝っているつもりなのか?」
「なっ……ちゃんと謝ってるだろ、こうして!」
少年もまたカガリがおかしいと感じていたらしく、苦笑しながら言うと、カガリが眉を吊り上げる。
「だから、悪かったって言ってる!」
カガリが怒ったようにキラに詰め寄るので、キラはすこし後ずさりした。
「わ、わかってるよ。大丈夫、そんなに痛くなかった……と思うし」
実際のところ彼女の力は少女のそれにしては強く、キラの頬は赤いあざになっているため、思わず言葉がにごってしまった。
カガリはそれも気に入らなかったようで、拳を握ってわめいた。
「おまえな、こっちが謝ってるのに……っ!」
さらにカガリがへそを曲げそうになったところで、後ろの少年がこらえきれずについに噴き出した。すると今度は彼女の怒りは少年に向く。
「アスランッ! 笑うな!」
「いや、すまない……だが、誰が見ても怒ってるようにようにしか見えないぞ、おまえ」
アスランと呼ばれた少年は、さらに笑い出しそうになるのを我慢するように、口元を押さえている。
怒りと屈辱でわなわなと震えるカガリをよそに、らちが明かないと踏んだアスランは、一歩前に出てキラに向き合った。
「代わりに謝罪する。さっきはすまなかったな」
「あ、ううん……もう大丈夫だから」
カガリとは違い、大人びて落ち着いた様子の少年に、キラも思わずほっとする。
同年代に見えるが、整いすぎているというほど端整な容姿と、彼のまとう静かな雰囲気のせいで、同性なのにどぎまぎとしてしまった。
「俺はアスラン。こいつ――カガリの連れだ」
アスランが差し出してきた手に、キラもすこし遅れて手を伸ばす。
「えっと……ぼくはキラ・ヤマト。よろしく、アスラン」
手を握り返すと、アスランがほほえんだ。
「カガリから話は聞いている。彼女を〝ヘリオポリス〟で助けてくれたそうだな。感謝する」
「そんな、大したことはしてないよ」
アスランとは相性が良いのか、この短いやりとりのなかでもふたりの間になんだか居心地の良い空気を感じて、キラも思わず笑顔になる。
そこに、隣で見ていたカガリが割って入った。
「大したことないわけあるかっ! あのあとずっと気になっていたんだぞ、おまえはどうしたんだろうって……」
最初こそわめいていたものの、気まずさからか途中で彼女は静かになって、バツが悪そうに目を逸らした。
「――おまえが〝ヘリオポリス〟の崩壊に巻き込まれたんじゃないかと思うと、気が気じゃなかった」
口調こそぶっきらぼうだったが、その言葉には彼女の心配が表れていて、キラは悪い気分はしなかった。
そういえば――と思う。キラは〝ヘリオポリス〟でカガリに会ったとき、彼女をシェルターにひとり押し込んで、自分は銃撃戦の中に飛び込んでいったのだった。逆の立場になって考えると、彼女の心配も相当なものだっただろう。
「……ごめん」
「そうだ! 二度とあんなことしてみろ、許さないからな」
カガリがまた怒ったように言うが、そこに小動物のような可愛らしさを感じて、キラは素直に受け入れた
やりとりと見守っていたアスランが、呆れたように口を開く。
「二度とするな、は俺が言いたい。あんな危険な真似、二度とよしてくれ」
「うっ……」
「おまえが崩壊に巻き込まれたと聞いたとき、俺は生きた心地がしなかったぞ」
「……ごめん……」
批難のにじむ声に、カガリが肩をすくめる。
どうやらアスランは彼女のお目付け役らしい、とキラは悟った。
そういえば、彼はさきほどカガリがキラに殴りかかったとき――〝アークエンジェル〟のクルーとレジスタンスのメンバー間でにらみ合い、緊張状態にあったとき――咄嗟にカガリに銃を向けようとしたムウの前に、牽制するように立ちはだかっていたことを思いだす。様々な意味で、アスランはカガリを守っているのだろう。
「そ、そうだ! おまえたち地球軍と、わたしたちレジスタンスはこの度協力することになったんだ」
気まずい状態から話を逸らそうと、カガリがわざと明るい声を出した。
ずいっとカガリが顔を突き出してきて、その距離の近さにキラはぎょっとする。
「これから物資の調達のため、わたしは街へ行く。おまえもついてこい」
「ええっ!?」
「これは両者の間で決定したことだ。おまえにもじきに正式に命令が下るぞ」
戸惑うキラをよそに、カガリは居丈高に告げる。
その雰囲気は命令することに慣れているようで、聞く側を無意識に従わせてしまうような妙な説得力を持っており、キラは反発できなかった。
「カガリ。それなら俺が行く」
アスランが咎めるように眉を寄せたが、カガリはとりあわない。
「アスランは『別のもの』を買いに行け。わたしは日用品を買いに行くから。こいつを護衛につけると向こうから打診があった」
「しかし……」
アスランはキラの顔を一度見てから、なおも食い下がった。
キラはわけがわからず、ふたりのやりとりを黙って見守る。
「なら、交代するか? アル・ジャイリーのところへわたしが交渉に行くから、おまえは街に」
「――いや、そのままでいい。おまえをあんな奴のところへ行かせるわけにはいかない」
カガリの口から人の名前らしきものが出た時点で、アスランは諦めたように承諾した。どうやら、カガリは比較的安全なところへ行く一方、アスランのほうが危険なところへ行く手はずになっているようだ。
彼がはあ、とため息をつくのを気にもとめずに、カガリはキラの方へ向き直った。
「それじゃ、決まりだな。おまえも準備しておけよ。一時間後には出発するから」
「え? あ、うん」
突然話を振られて、思わずキラが頷くと、カガリは満足した様子で「それじゃあわたしは準備してくる」と去っていった。
まるで嵐が去ったような状況に、キラがぽかんとしていると、アスランがもう一度盛大にため息を吐いた。
「……いろいろ、すまない」
「いや、その……うん」
頭を抱えているアスランの様子に、キラはこの短い間だけで彼の気苦労が理解できてしまって、同情のまなざしをむけた。
アスランはずいぶん真面目な性格のようだ。彼女の連れだと言っていたが――あの様子では相当胃を痛めていることだろう、と嫌でもわかってしまう。
アスランはうっぷんをはらすように前髪をかきあげてから、キラに向き直った。
「悪いが、カガリを頼む。見てのとおり危なっかしい奴だから、苦労するとは思うが」
真面目な様子で言われて、キラはすこし戸惑った。
「うん……でも、ぼくは正式な軍人ではないから、まともに護衛なんてできないかもしれない」
キラはもとはと言えばただの学生であり、銃の扱い方もしらなければ、何の軍事訓練も受けていないのだ。
だが、アスランは安心させるようにキラにほほえみかけた。
「その心配はしていない。あれでもカガリはそれなりの訓練を受けているからな」
それに、とアスランは続けた。
「おまえはコーディネイターだろう」
「え……」
突然言い当てられて、キラはどきりとした。
コーディネイター――キラがそれに当てはまることで、ここ最近はろくなことがなかった。ここがナチュラルの多い地球だというのも大きい。
反射的に警戒してしまうが、アスランからは悪意をまったく感じられず、逆に困惑してしまう。
「さっき、カガリの拳を受け止めたのを見ていたらわかる。それに――俺もコーディネイターだ」
「きみも……?」
キラはまたも驚いた。〝ヘリオポリス〟を出てから、初めて会った同胞だったのだ。――キラが〝ストライク〟で戦った『敵』を除いて。
言われてみれば、アスランの整った容姿だけでも、コーディネイターであるというのはひどく納得がいった。
「ここでそのことをばらすとろくなことがないから、普段は黙っているがな。できれば俺のことはまわりに言わないでおいてほしい。まあ、わかる奴にはすぐバレるんだが――」
アスランが苦笑する。
その姿を見て、キラは自分が安心していくのを感じた。
彼を初めて見たときから妙なシンパシーを感じていたのだが、それは今、はっきりとした親近感へと姿を変えている。
「うん。わかった」
「すまない、助かる」
アスランが笑むのにつられて、キラも自然と笑顔になった。
しかし――彼に親近感を感じると同時に、似た者同士であることに、わずかに不安を覚える。
「でも……きみも、コーディネイターなんだね」
その言葉の意味をアスランも理解しているのか、彼は困ったように眉を下げた。
今ふたりがいるのは、ザフト――コーディネイターたちに反発する組織のなかだ。アスランのいるレジスタンスしかり、キラのいる〝アークエンジェル〟しかり。
コーディネイターとそうでない者たちが争う戦争のなかで、ふたりは同胞と別たれた道を歩んでいる。
「自分でも妙なことだと思っているが……コーディネイターであるということ以前に、守りたいものがあるんだ」
アスランが真面目な声音で言うのに、キラははっとして、目の前の同胞の顔をまじまじと見た。
その瞬間、キラの脳裏によぎったのは、〝アークエンジェル〟にいる友人たち――キラがコーディネイターと戦ってでも、守りたいと思った人たちのことだ。
「ぼくも、一緒なんだ……友達を守りたくて」
その言葉に、アスランもはっとしてキラを見た。
「そうか……同じだな」
「うん」
数秒の沈黙が流れて、ふたりは互いに深い共感を覚える。
やっぱり――とキラは思う。最初に彼に感じた親近感は、勘違いではなかった、と。
アスランが目を細めて笑んだ。
「やはり、キラにならカガリを任せられるよ」
彼の言葉は、信頼の証だった。
嬉しさにキラも頬がゆるむ。
「アスランはカガリが好きなんだね」
「な……っ」
このわずかの間に感じ取ったことを素直に口に出すと、図星らしいアスランがぎょっとした。
カガリとの様子を見ていればわかりやすいにもほどがあるのだが、彼はそれを表に出している自覚がなかったのだろうか。
「俺とカガリは、そんなんじゃ……っ。ただ、幼馴染なだけで――」
アスランがしどろもどろになりながら言い訳をする。
先ほどまで、ひどく大人びて落ち着いていた聡明な少年だったのが、その変貌ぶりに、キラはつい噴き出した。
アスランはバツが悪そうに目を逸らす。
「おい、笑うな……」
「ごめん。そっか、仲が良いんだよね」
「……まあ、な」
アスランが口元に手を当てて、視線を明後日に向けたままぼそぼそと言う。その頬には、わずかに赤みがさしていた。
「心配しないで。カガリはぼくが守るよ」
「……頼むぞ」
アスランは困ったように笑い、キラを見た。
キラもそれに微笑み返す。
ここは立派な戦場のなかだけれど――その瞬間だけは、年相応の平穏な時間に戻れたような気がした。
アスランとカガリという妙なふたりとの出会い。
それは、陰鬱な戦いの日々のなかで、キラが久々に心地良いと思えたものだった。
息抜きで書き始めたというのに、思いのほか長くなってびっくりしています。
今回はさらさらと書けました。
ここまでアスランとキラが話しているのを書くのははじめてだったので、とても楽しかったです。この二人はやっぱり親友らしく話を進めやすいですね!
砂漠の虎編は種のなかでも結構好きだったりします。
バルトフェルドのセリフがどれも深いですよね……。
一番の推しポイントは、虎の屋敷に行ったとき、バルトフェルドに銃を構えられて、咄嗟にキラがカガリを背に庇うところです。たぶんカガリの方が訓練うけてるのに、キラは男の子でコーディネイターだからってカガリを守ろうとするんですよ!このときのキラカガは最高にかわいくて大好きです。この話では書きませんが……。
そんなに展開は思いついてないので、行き当たりばったりになりますが、また書けたらいいなぁと思います。
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